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SH I GA I DA I NEWS v o l . 1 9
胎生期の環境と生活習慣病の
相関に着目したDOHaD研究
機能に す。 このよ れるわけです
このDNAの塩基
に遺伝子発現の多様
は、 エピジェネティクス
Epigenet i cs
) と
呼ばれています。
エピジェネティクスのしくみと
DNAのメチル化やDNAを取り
ストンタンパク質のアセチル化、 ある
は遺伝情報をもたないマイクロRNAが
遺伝子情報を読むか読まないかを制御
しています。 エピジェネティクス因子は
胎生期の環境に限らず、 生まれてからも
ずっと栄養やストレスといったライフス
タイルの影響を受けやすいことが特徴で
す。 同一の遺伝子セッ を持った一卵性
双生児でも、 身体的特徴や病気の発症な
どに差が出るのはそのためです。
若い研 活気のある
島根大学では、 四
や形を複比、 あるい
名付けた比率を使って数
て、 手足の機能との関連を
に取り組んできました。 その過
いろな動物の骨を計測したところ
類の手と足の骨格構造が樹上性 (ほぼ
木の上で生活すること) と半樹上性 (樹
の上と地上を行き来しながら生活するこ
と) できれいに分かれ に気づきま
した。 複比や三重比はメビウス変換
f
z
=
az + b
/
cz + d
と深く関連してい
ますので、 今後はメビウス変換などの数
学的手法を取り入れて、 手の機能と形の
研究をしたいと考えています。
実際には、 手の麻痺がある患者さんへ
の、 効果的なリハビリなどに応用できる
よう、 理学療法士や作業療法士の協力を
得ながら進めていきたいと思っていま
す。 また、 ロボット工学でどういう手の
形にするとつかみやすいかという研究に
も、 将来つながるのではないか 期待し
ています。
今後も研究のメインは発生であり、 胎
生期の環境と統合失調症との関連につい
て研究を進めていきたいと考えていま
す。 現在、 研究医コースを志している学生
とともに、 脳の発生の研究を始めていま
す。 生体機能形態学部門では、 学生や若
い研究者を中心に据え、 彼らのアイデア
を取り入れながら発展させた研究の成果
を、 学会や論文で積極的に発表してもら
えるような活気のある研究室にしていき
たいと考えています。
低出生 期特に問題 ために行った
の影響や、 高齢出
の増加に加えて、 女
くる妊婦自身の過度な食
つと考えられています。 そ
今後生活習慣病が増えてくるの
と危惧されています。
発生?分化の重要な機能を担う
エピジェネティクス
今、 関心を持っているのは、 胎生期の環
境の変化と将来起こりやすい精神神経疾患
との関係を明らかにしていくということで
す。 
低栄養の母胎で育った胎児 (子宮内発育
不全) は、 生まれた後に2型の糖尿病や虚血
性心疾患などの生活習慣病になる確率が高
いことがわかっています。 同じように、 統合
失調症や自閉症 どの精神神経疾患の発症
も、 胎生期の栄養環境や母体感染症との関
連性があると言われていて、 これにはエピ
ジェネティクスが関係しています。
1個の受精卵から分裂していくと、 どの
細胞も基本的に同じ遺伝情報を持っている
はずなのに、 別々の細胞になれるのは、 DN
Aの情報の中で読まれる部分と読まれない
部分があるためで、 あるもののみを発現さ
せ、 ほか ものを発現させないという遺伝
子の選択的発現があるからです。
胎生期の環境に変化があった場合、 通常
なら読まれなければならない部分が読まれ
なかったり、 その逆が起こったりすると、 遺
伝子す わちDNAの塩基配列に変異がな
くても、 間違って読まれた情報によって、
DNAメチル化とヒストン修飾
(ヒストンタンパク質のアセチル化)