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SH I GA I DA I NEWS v o l . 1 9
激増するアレルギー疾患への取り組み
内視鏡下 ゲーション
鼻副鼻腔疾患の治療
います。まず、1990
療法が確立され、これまで
乏しかった慢性副鼻腔炎が
14員環マクロライ
ドの少量長期投与により治癒する
ました。
14員環マクロライドには免疫調節作
用があり、抗菌作用以外の作用によって
が発揮されることもわかってきました。
また、内視鏡手術が導入され、 ?副鼻腔
炎の手術が鼻内から低侵襲で行うことができ
るようになりました。当初は鼻?副鼻腔炎だ
けに行われていましたが、副鼻腔のう胞や眼
窩骨折、鼻出血手術、後鼻神経切断術、鼻?
副鼻腔腫瘍などにもその適応 広がり、現在
では
90%以上の鼻科手術を内視鏡下に行って
います。私たちの教室も内視鏡下の血管結紮
手術や歯原性のう胞の新しい 法を国際誌
に報告し、こうし 内視鏡手術の適応の拡大
に大きく貢献しています。さらに困難な再手
術例や、鼻?副鼻腔腫瘍の手術には、CTに
よるナビゲーションシステムや、2000年
に日本で初めて導入された術中MRI手術シ
ステムを利用して、より安全で確実な手術を
行っています。
嗅覚や味覚は人間が人間らしく生きる上で
極めて重要な感覚ですが、嗅覚?味覚の障害
を専門で治療する施設はほとんどありません。
当科では5年前から、京滋地区では唯一の嗅
覚味覚外来を開設して検査?評価から症例に
応じた治療に取り組み、患者さんの悩みに答
えています。さらに、嗅覚味覚障害の治療法
に関する臨床研究や基礎研究にも力を入れて
います。
頭頸部癌
?
血管吻合
外科の進歩
人間が生きる上で、
が出せることは極めて重
療においては、こうした機
いは再建して、患者さんのQO
についての努力を続けています。
合技術の発展により腫瘍切除後に体の
から組織を移植して再建する遊離組織移
が行われるようになり、手術の適用が大きく
がりました。私たちも、舌?口腔?咽頭の再建
には前腕皮弁や腹直筋皮弁などを利用し、下咽
頭や頸部食道の再建には遊離空腸を使って術後
の機能再建を行っています。一方で、喉頭の音
声機能の温存を目指して、喉頭部分切除術や喉
頭亜全摘手術などの新たに開発された手術法に
積極的に取り組んでいます。また、上顎癌に対
しては選択的動注化学療法を併用することでほ
とんどの症例で眼球が温存できていま 。 ら
に初期の咽頭癌に対する経口腔的な新しい低侵
襲手術への取り組みも開始しました。
頭頸部癌に対しては、手術、放射線、化学療
法を組み合わせた集学的治療が重要ですが、放
射線科、形成外科、消化器外科、呼吸器外科、
脳外科、眼科、口腔外科などの先生方と連携を
とりながら、それぞれの患者さんの病態に応じ
て最も適切な治療法を選択しています。患者さ
んのQOLを向上させる目的で嚥下外来も開設
し、リハビリテーション科と協力 嚥下リハ
ビリテーションを行うとともに嚥下障害に対す
る外科的治療も行っています。さらに音声外来
も開設し、声帯麻痺症例に対する音声機能の改
善のための手術も行い、患者さんのQOLの回
復を最終目的とした を行っています。
を傾けてい
一方、先天性
は出生児1000
に1人認められる頻
度の高い先天性障害
です。先天性難聴の
うちおおよそ
50%は
遺伝子に原因がある
と考えられています。
当科では先天性難聴
の遺伝診断を先進医
療として実施する準
備も進めています。
難聴の原因を遺伝子
レベルで特定するこ
とで、早期 人工内
耳手術など、原因に
応じた治療を実施す
ることができます。
難聴の患者さんに
は補聴器の使用が有用です。しかし、補聴器
のフィッティングには医師の診断を受けた上
で正しく装用すること 重要 、それぞれの
聴力にあった補聴器を使用しなければ、効果
が得られないばかりか有害になることもあり
ます。耳鼻咽喉科医師と認定補聴器専門店の
連携の上に補聴器を購入することが望ましい
のですが、実際には眼鏡屋さんで高価な補聴
器を購入させられたり、通信販売で購入して
いる人も多く、大きな社会問題になっていま
す。当科では日本耳鼻咽喉科学会認定の補聴
器相談医が認定補聴器専門店と連携して、補
聴器外来を開設しています。その他、補聴器
相談医の教育研修や、難 の方々向けの講演
会も行って、適正な補聴器使用のあり方につ
いての啓蒙活動も行っています。
(図5)