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免疫免疫細
生命科学講
生物学
教授
佳子
免疫細胞の移動のメカニズム解明を
研究テーマに
本来、 免疫応答は病原体から体を守るた
めのものですが、 自身の細胞や組織に過剰
に反応して攻撃を加えてしまうことで、 自
己免疫疾患を引き起こすことがあります。
また、 アレルギーも花粉などの外から 抗
原に対する過剰反応によって起 ります。
これまで、 自己免疫疾患を治療するために、
免疫応答の異常を制御する方法が研究され
てきましたが、 免疫関連の難病に対する有
効な治療法はまだほとんど開発されていま
せん。 
そんな中で、 私たちが注目してきたのは
免疫細胞がどのように移動するかというこ
とです。 これまでの免疫関連疾患の薬はほ
とんどが、 例えばリンパ球の活性化を抑え
るといった、 細胞の機能に働きかけるも
でした。 免疫系が他の器官と違うのは、 細胞
が一つの組織に固定して存在するのではな
く、 体の中を動きまわっているということ
です。 どのように移動するかということと、
どのように機能するかが表裏一体となって
います。 免疫細胞が生体内でどのような分
子機構で移動するかを解明することは、 創
込んでいきます。 テザリングと
っているのがセレクチンと
化にはケモアトラクタン
ンが活性化して接着、
多段階の反応が起 必
までの
薬の標的プロセスとして可能性があるの
はないかと考えています。
例えばある細胞集団 (サブセット) を特定
の場所に行かせないということができれば、
細胞の機能には変化がないので全身的な影
響が比較的少なくて、 ある特定の部位の選択
的な治療が可能になります。 機能を対象とし
ている今まで 薬と組み合わせて使うこ
で、 より大きな効果も期待できます。
リンパ球と血管内皮の相互作用の
メカニズムを解明
例えば皮膚
に炎症が起き
た場合、 樹状
細胞という特
殊な細胞が抗
原 を 取 り 込
み、 輸入リン
パ管を通って
リンパ節に移
動します。 抗
原に特異的な
リンパ球が来
るとそこで増
る役割を果たしていますが、 一
リンパ球が炎症組織に入っ
介するようになります。
るのは、 性質を変
ムを明らか する
質を修飾する
カニズムの解
殖が始まり、 増殖した細胞は少し性質を変
えて全身に戻って行きます。 性質が変わる
と移動のパターンも変わり、 それまでは循
環していたものが炎症のあるところに移動
するようになります。
リンパ球がどのようなメカニズムで血
管から外に出るかというのが今までの研
究テーマの一つです。 血管内では血液がた
いへん速い速度で流れていて、 血流による
非常に大きな力 (ずり応力) がかかってい
ます。 リンパ球は最初は軽く血管内皮に接
着して (テザリング) 、 次にローリングして
その間に活性化され、 しっかり血管内皮に
接着して、 血管の細胞の間に潜り込み、 組織
ずつ明らかにしていきたいと思
とで機能を発揮する
体内でどのように動
どのように離れ
かにしそれを 免疫疾患な を目指
生命科学講座 生物学 教授
平田 多佳子
生物学のほか、物理学、
平成
24年6月に着任された生物学
いて かがいました。