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先端知識と緩和ケアのマインドを兼ね備えた
医療人の育成を目指して
う人たち んでいってく
医療倫理は西洋
ば 「生命倫理4原則
が、 私は東洋的な視点
度捉え直すことができない
す。 仏教だけでなく、 漢文化
の 「仁愛」 、 あるいは老子や荘子
「万物斉同」 という思想など、 東洋
中での 「医」 についての考え方も教授し
きたいと考えています。
医学生のみなさんには、 仏教的なこと、 東
洋的なこと、 日本的なことも広く教養として
身につけてほしいと願っています。 実際に医
療の現場では患者さんと会話を交わせる時
間はそう の出会いを大
できる医療人に
の医科大学で行われ
育に入っていくに従っ
性や鋭敏さが下がっていく
教育の出発点 共感すること
いて考えてほしいと思っています
医療の現場に出るまで、 看取りをし
とのな 医療人が多い中で、 命の問題を
学の医学部の としてやっていくのは
ても難しいことです。 しか 、 インド仏教の
古典学を専門に研究して、 古の賢人たちの
教えが2000年、 3000年と続いてき
て、 そこには比喩的な意味で命がつなが
ていて、 時代が変わっても人 ある限り伝
わるものであると思っています。 亡くなる
他者の 「いのち」 を、 わが 「こころ」 につないで
いくことも、 医療人に って大切 ことで
はないかと思います。 そういう教えを授業
の中でも伝えていきたいと思っています。
そして、 他者と自分を区別をしない仏教
の 「無我の境地」 にケアマインドがあり、 自他
の区別なく万物一つ、 分け隔 ない中に自
分を位置づけられないか、 区別せずに相手
の気持ちに寄り添えないかといった、 心の
柔らかさ 作っていけるよう、 思考の繰り
返しを提供していきたいと考えています。
良き医療人として花開くことを願って
看護学科の3年生編入の授業では、 まず
「さくら」 の話から始めました。
「さくら」 の
語源は、
「咲く」 という動詞に接尾語の 「 」
が添えられたとされていますが、
「さ」 を農
耕と関わ の 「座 (くら
稔りをもたらす
あり、 わが国では特
が強く結びつい 地域
ことがうかがえます。
花はいずれ散って地に戻り、
とつながっていくのですが、 孤独
社会ということが言われる今の世の
医療人を目指す学生のみなさんには、 自
と結びつきながら私たちの営みがあること
をもう一度振り返りながら、 教養教育 臨
んでほしいと思います。
そして、 この 「さくら」 の話には、 学生一人
ひとりを桜のつぼみに例えて、 学びと出会
いの中から、 何か素晴らしいものを心に宿
して、 一つひとつ が美しい花を咲
かせるようにという思いも込められていま
す。 
最先端の知識 ?技術を駆使しながらも、 人
の世の営みが自然と深く結び いていると
いう眼差しとケアマインドを持った医療
人となって、 美しい花を咲かせてほし と
願って ます。
「生命倫理
4原則」 の考え方の
基礎となっている古代ギリシアの
ヒポクラテス
(紀元前
4
6
0
3
7
5年頃)
「誓い」 の 一 節
〔ギリシア語原典からの同じ節の邦訳
2例〕
「私が自己の能力と判断とに従って医
療を施すのは、 患者の救済のためであり、
損傷や不正のためにはこれを慎むであり
ましょう。 」
〔大橋博司訳〕
「養生治療を施すにあたっては、 能力と
判断の及ぶかぎり患者の利益になること
を考え、 危害を加えたり不正を行う目的
で治療することはいたしません。 」
〔大槻マミ太郎訳〕