脳神経内科は、脳卒中に代表される救急疾患から、原因や治療法がいまだ確定?確立していない、いわゆる難病まで、神経系の疾患(精神疾患を除く)の診断と治療に携わる診療科です。
診断?治療ともに困難であったこの分野でも近年目覚しい進歩があり、診断可能な、あるいは治療可能な疾患が増えてきています。また、社会の高齢化とともに、脳卒中?パーキンソン病?認知症が増え、脳神経内科に対する社会的ニーズも高まっています。これらの疾患に対して、早期診断?早期治療が欠かせません。
中国足球彩票医学部附属病院脳神経内科は、救急疾患から神経難病まで、あらゆる疾患を対象とし、高度な診断?治療技術だけではなく、患者さんお一人お一人のニーズに対するよりきめ細かな対応ができるよう、各地域の中核病院?診療所?医院の先生方や地域?在宅に関わる多職種の皆様と連携し、住み慣れた地元で安心して療養が出来るよう、診療を進めて参ります。
脳血管障害には脳に栄養を与える血管が詰まる「脳梗塞」と、血管が破れる「脳出血」に大きく分類されます。各々突然に、手足の麻痺や、しびれ感、言葉が喋りにくくなるなどの症状が出現します。直ちに診断して、治療を開始することが必要です。当科では、脳神経外科学講座と連携し、脳梗塞の超急性期の血栓溶解の適応のある患者さんに線溶療法を行い、再開通しない場合はカテーテルを挿入して血の塊(血栓)を除去するという血管内治療が速やかに実施できる体制を整えております。
脳血管障害は高血圧や糖尿病、脂質代謝異常(高コレステロール血症など)を有する中年期以降に発症しやすい疾患ですが、動脈解離という若年者に発症する血管障害は脳梗塞やクモ膜下出血を合併し、頭痛を伴うことが特徴です。クモ膜下出血は動脈のコブである動脈瘤の破裂によって起こることも多いため、慢性頭痛や時折のめまいといった症状の方は「かくれ動脈瘤や動脈解離」が潜んでいる可能性がありますのでMR検査をお勧めします。
脳梗塞の治療では、まず血管を詰めてしまった血栓を溶解するために血栓溶解剤(tPA)を点滴し、以前は治らなかった麻痺や言葉の障害が回復する機会が増えました。この治療は発症後4時間半以内に行うことが必要です。この4時間半の間に、診察、MRI撮影、ご家族への説明を行う必要があるため、発症後は出来るだけ早く受診して下さい。
従来いわゆる「神経難病」と呼ばれてきた病気ですが、実はこの20年で最も進歩した分野です。ALSは全身の筋肉が萎縮し、麻痺が進行する病気ですが、原因の全容解明が近い将来なされるでしょうし、進行を遅らせる薬が新たに登場しています。パーキンソン病は動作が鈍くなり、手足の震えや、歩行時に足が前に出にくくなる病気です。脳の「ドパミン」と呼ばれる物質が減少して起こる病気ですので、ドパミンを補充する治療が主体となります。年々新薬が開発されていますし、加えてリハビリテーションなどの非薬物療法もお薬に劣らず有効であることも判明し、両者を上手に組み合わせることで、日常生活を送っていただけるようになっています。滋賀医大脳神経内科では、ALSの専門病院として医師主導治験や国際共同治験の実施施設に選定されています。脊髄小脳変性症は歩行時のふらつきやしゃべりにくさを主な症状とする病気です。遺伝性、非遺伝性の両者が有り、病気によって症状が異なるため適切な診断と、症状に応じた対症療法が中心となります。近年小脳変性症に専門的な集中リハビリテーションが有効であることが明らかとなりました。滋賀医大脳神経内科ではリハビリテーション科との共同で、脊髄小脳変性症患者さんに対する4週間入院による集中リハビリテーションプログラムを作り、効果を上げています。
超高齢化を迎えた我が国では65歳以上の高齢者が3000万人に迫り、認知症患者も450万人を超えました。認知症は早期に発見して適切な治療を始めることによって、症状の進行を遅らせることが期待できます。また認知症にはアルツハイマー病、レビー小体病、脳血管性認知症など異なる病気が含まれ、また正常圧水頭症や慢性硬膜血腫のように手術によって改善するものや、ビタミン欠乏症、感染症、甲状腺機能低下症など内科的な病気の部分症状として出現する場合や、自己免疫性てんかんによる発作症状など「治る認知症」を正確に診断し、治療を行うことも重要です。認知症の症状は必ずしも典型的なものばかりではなく、その診断には専門的な経験と知識が必要です。滋賀医大脳神経内科では2016年より認知症専門外来を設け、早期の診断と治療を進めており、アルツハイマー病の国際共同治験にも参加しています。滋賀県内の認知症疾患医療センターやかかりつけ医、認知症サポート医?協力医の先生方とも連携しながら、患者さんとご家族をサポート致します。
加齢による物忘れは 「約束をしたこと」、「印鑑をしまったこと」自体は覚えています。つまり「自分が忘れている」こと自体は覚えていますが、認知症では約束した「そのこと自体」を忘れたり、印鑑をしまった「そのこと自体」を忘れたりします。
免疫系の異常により、自分の体内の部位に対する自己抗体によって様々な疾患が発症することがあります。このような疾患群を神経免疫疾患といい、重症筋無力症?ギランバレー症候群?多発性硬化症、視神経脊髄炎、自己免疫性てんかんなどがあげられます。
当院では神経免疫疾患を早期に診断し、ガンマグロブリン大量療法、血漿交換、インターフェロン自己注射導入など、疾患に応じた適切かつ専門的な治療を行っています。
昨年、当科は京滋の単一施設としては重症筋無力症の特定疾患申請数で最多となりました。また、クリーゼ(症状が急激に悪化し、呼吸筋麻痺をきたして人工呼吸器による管理を要する状態)発症時にはICUと共同で治療にあたります。また、胸腺腫合併例には胸部外科と、免疫抑制剤抵抗性の難治例には血液浄化部と共同で治療にあたることが可能で、様々な治療のオプションがご提供できます。
ガンマグロブリン製剤を点滴で投与する治療法です。
ガンマグロブリンとは、血液中に含まれるたんぱく質のことで、細菌やウイルスを中和する働きがあります。
眼瞼や、顔がけいれんして目が開かなくなる眼瞼痙攣や、顔の半分が引っ張られるような半側顔面痙攣、さらに首や手の筋肉がねじれて真っ直ぐ向けなかったり、字が書けないジストニアなど、自分の意志に反して筋肉が様々な動きをする病気を「不随意運動症」といいます。ボツリヌスはボツリヌス菌の毒素を無毒化して治療用に開発したもので、筋肉の無駄な動きを抑えるため、このような症状に良い適応です。最近では脳梗塞後の筋肉の拘縮や痙縮にも用いられるようになりました。滋賀医大では、ボツリヌス専門外来を、毎月第1?3月曜日に設けて、集約的な診療ができるように体制を整えており、A型ボツリヌス毒素ボトックスを用いた治療(保険適用)を当科外来で実施しています。ボトックスは個別に発注する薬剤に指定されておりますので、初診受診時の投与はできませんのでご了解ください。
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