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SH I GA I DA I NEWS v o l . 2 1
人形人形療
臨床看護学講座 (老
教授
認知症高齢者の心のケアに有効な
非薬物療法
認知症高齢者の本質的な課題は、 記憶力
の低下や認知機能障害に伴う存在不安であ
ると言われています。 不安の対処行動が行
動障害 (
BPSD
=認知症に伴う徘徊や妄想 ?
攻撃的行動 ?不潔行為 ?異食など 行動 ?心
理症状) となり、 当事者の生活の質を低下さ
せ、 家族や介護者に大きな負担を強いるこ
とになります。
認知症高齢者の心のケアについては、 精
神療法や認知行動療法、 心理教育などのさ
まざまな非薬物療法が治療戦略の一翼を
担っています。 人形療法はダイバージョナ
ルセラピー
(※)
の一つとしてわが国に紹介
され、 認知症治療の一環として取り入れら
れましたが、 その研究はまだ十分であると
は言えません。
人形を抱いた高齢者の方がいきいきとし
た表情をされているのを見て、 なぜ人形を
抱くことでイライラや怒りがおさまるのか
不思議に思ったことが研究を始めるきっか
けとなりました。
平成
19年から
21年まで、 認知症対応型の
安をできるだ 安心に向けてい
ケアの基本になります。
理的ニーズについて、
帰属意識 (仲間入りのニー
「自分らしさ (物語
れかが安定す
グループホームの協力を得て、 認知症高齢
者にとっての人形の意味を明らかにするこ
とと、 効果の高い人形 素材などを実証的
に検証することを目的に介入研究を行いま
した。
※ダイバージョナルセラピ
直訳すると 「気晴らし療法」 で、 レクリエーションや創
作活動などを楽しむことを取り入れながら、 認知症や
精神ケアを必要とする人々の気分転換を図ったり、 生
活の質の向上を図ったりする手法。 園芸、 音楽、 ゲーム、
エクササイズ、 回想などがあります。
役割意識や自分らしさを人形に
投影することで生まれる安心感
グループホームに入所している認知症高
齢者に、 5種類の人形を提示しました。 その
うち、 人形に強い関心を示した入所者を対
象に、 人形に対する反応のほか、 日常生活上
における行動意欲、 表情、 言葉、 感情の起伏、
行動障害の変化等を観察記録しました。 ま
た、 言語コミュニケーションが可能な対象
者には、 人形を媒介に話を聴き逐語録を作
成しました。
、 どういう想いを人形に託すか
うので、 そこをきちんと見
人形療法の難しさです。
タッフに協力を
者に変化が現れ 、 他の入所 いただきス世
その結果、 人形と関わるようになって、 昔
の子育ての記憶を取り戻したり、 一緒にい
ることで寂しさが癒されたりしたことで、
暴言などの行動障害が軽減し、 穏やかさや
落ち着きを取り戻すといった効果が確認で
きました。 
認知症高齢者は拠り所としていた知的
能力や生活史を失ったことで、 自分はどう
なってしまったのか、 これからどうなるの
かという不安を抱えることになるため、 こ
につなげるツールの一つであ
ていくことが大切になり
たケアを非薬物療法とし
、 さらに研究を継続
ます。
守る看護の
臨床看護学講座(老年看護学) 教授
畑野 相子
厚生労働省の推計による
14年に149万人であった
24年には300万人を超え
急増しているため、認知症
人形を用いたドールセラピーに
今後の展望のほか、老年看護の授業